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ジムニーの高い走破性を継承し、見た目は軟派で大ヒット!初代スズキ エスクード【推し車】

現行モデルから見れば十分硬派だった、初代エスクード

スズキ歴史館に展示されている、ドイツ仕様「ビターラ」の特別限定車エルトン・ジョンモデル

現行の4代目はフルモノコックボディのクロスオーバーSUV化、2022年4月以降はフルHV仕様で販売されているエスクードですが、1988年に発売された初代モデルはラダーフレームにパートタイム4WDと、それだけならジムニーのサイズアップ版と思うほど硬派。

しかし、乗用車チックの内外装や快適性の高さでは従来からのスパルタンなクロカン4WDと一線を画しており、「日本で初めて成功したシティオフローダー」と言われる一面も持っていて、ある意味ではクロスオーバーSUVの元祖とも言えます。

今回はスズキ歴史館に展示されている、ドイツで販売されていた特別仕様車、海外名「ビターラ」のエルトン・ジョンモデルの画像を交えつつ紹介しましょう。

実はクロカンとしても実力派の、元祖シティオフローダー

3ドアコンバーチブルがベースで、ドアにはエルトン・ジョンのサイン入り

1970年代末から徐々に盛り上がり、バブル時代に入った1980年代後半から一挙にブレイクした「RVブーム」(※)。

(※RV=レクリエーショナル・ビークル)

元々は業務用途が多かった商用車やクロスカントリー車をカッコ良く乗ろうというもので、広義にはミニバンステーションワゴン、1BOX車やトールワゴンも含みますが、その迫力からRVブームの主役となったのはクロカン4WDでした。

それも当初はクロカン特有のリアにスペアタイヤを背負ってゴツゴツしたオフローダーロックへ、巨大で重たいグリルガードなどを装着、まるで世紀末伝説に出てきそうな装備でいながら、走るのは主に街中というファッション感覚だったのです。

もちろんそれらは非合理的で無用な装備、バブルが弾けて景気が悪くなると、無駄の象徴として批判にさらされますが、それを見越したかのように、乗用車チックにスマートな内外装と快適装備でまとめた、コンパクトオフローダーがスズキの初代エスクードでした。

ただし軟派だったのは内外装と、ストラット&コイルスプリング独立懸架だったフロントサスのみ。

強固なラダーフレームへ別体のボディを載せ、単純ながら悪路走破性が確実なパートタイム4WD、それに大径タイヤで稼いだ最低地上高は、紛れもなく本格的なクロカン4WDそのものです。

つまり初代エスクードとは、ジムニーのようなヘビーデューティーSUVと、後に乗用車ベースのフルモノコックボディで作られるクロスオーバーSUVの中間的な、「ライトデューティーSUV」の先駆けでした。

当初はコンパクトSUV、後にロングボディやV6エンジン追加

フロントグリルは日本仕様(エスクード)のV6モデルと同じだが、エンジンは2リッター直4という日本ではレアな組み合わせらしい

初期の初代エスクードは、エンジンが1.6リッター直列4気筒SOHCのみ、3ドアの「ハードトップ」(メタルトップ)またはキャビン後半部がソフトトップ(幌)の「コンバーチブル」の2種類で前者には商用登録のバンもある3種類。

同クラスのライバルに、遅れて発売されたダイハツの初代ロッキー(1990年発売・3ドア1.6リッター)があったものの、フラッシュサーフェス化されてスッキリした外観、無骨さを感じさせない内装、当初からAT車を設定するなど軟派なエスクードへ人気が集中します。

さらに1990年にはロングボディの5ドア車「エスクード ノマド」や、3ドアにも前席上部に脱着可能な樹脂製サンルーフ、キャビン後半部も脱着可能としたレジントップ車を追加。

エンジンも2リッター直4、2リッター/2.5リッターV6、マツダから供給を受けた2リッターディーゼルターボを加え、コンパクトで軽快な1.6リッター3ドア車から重厚感あふれる2.5リッターV6、5ドアの高級モデルまでラインナップします。

他に有名な派生車として、2ドア2シーターオープンSUVの珍車、「X-90」も初代エスクード3ドアがベースで、販売こそ全く振るわなかったものの、珍車・レア車・不人気車といったキーワードでは必ず話題に上がる伝説的存在です。

また、ディーゼルエンジンの見返りでマツダにOEM供給された、「プロシードレバンテ」もレア車と言えるかもしれません(2代目途中まで販売)。

1994年にはトヨタ RAV4(初代)が発売されたものの、モノコックボディのフルタイム4WDでより乗用車チックな同車に対し、初代エスクードは1980年代から販売されているシティオフローダーで唯一対抗可能なモデルとして、根強い人気を誇ったのです。

「サイドキック」や「ビターラ」として世界各国でも販売

スペアタイヤもエルトン・ジョン仕様というこの特別限定車は日本で販売されておらず、かなり希少なんだとか

初代エスクードは日本国内のみならず、あくまで軽自動車ベースでサイズやパワー面では不利な面もあったジムニーから上級移行するモデルとして、また安価な小型SUVが求められていた欧米向けとしても歓迎されました。

日本でデビューした翌1989年にはカナダでの現地生産を開始、「サイドキック」の名で北米での販売を開始し、さらに日本で生産したモデルも「ビターラ」の名で輸出し、軽自動車ベースの小型車やジムニーでは及ばない国、地域でもスズキの名を轟かせます。

日本ではシティオフローダーとしての人気がメインでしたが、海外では軟派な見た目に隠された本格オフローダーとしての能力も存分に発揮され、ダカールラリーのように長距離を走破するラリーレイド競技へも参戦。

変わったところでは、田嶋 伸博の率いるスズキスポーツ(現・モンスタースポーツ)がカルタス後継として、前後にエンジンを積むツインエンジン版エスクードを開発、パイクスピード・インターナショナル・ヒルクライムや、全日本ダートトライアルで大活躍しました。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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